冒険の旅-海と自転車の旅-5日目の記録
おはよー!朝だよ!
いよいよ念願の美ら海ゾーンへ意気揚々と出発!
と行きたいところだが、
出発早々、1人の少年とのやり取り。
少年:ああまた1日が始まった
僕:どういう意味?
少年:長い1日が始まったなってこと
僕:着いたらどう思うの?
少年:ああ終わった
僕:自転車漕いでる間は?
少年:無心、何も考えてない
僕:まじ?何か思うでしょ?来なきゃ良かったとか?
少年:よく思う
僕:来て良かったは?
少年:あんまり思わない・・・あ、海で遊んでるときは思うよ
旅も終わりを迎えようとしているのにそんな日々を過ごしてるのかあ。
海の神様、どうか彼に素敵な夏を授けてください。
順調に進むが、暑くなるのが早い。
休もうにも休まる場所がない。
どこかに体を冷やす場所はないのか。
途中で川を見つけて水をかぶる。
冷たい、信じられないほど冷たい!もはや寒い!
嫌だ嫌だと逃げ回る少年たちにも一人残らず冷水をお見舞いする。
ぎゃーっ!
悲鳴なのか歓喜なのか。
蓄熱した道路にへばりつく。ゴロン。
あんなに恨めしかったアツアツホカホカの道路があったかい。
脳みそがシャキッとして内臓も元気になる。
水に恵まれたこの島は豊かだ。
元気を取り戻して再び出発。オフロードだって慣れたもの。
念願の目的地へ到着。
出発の時、「来て良かったと思うことが(自転車に乗っている間は)ない」と話していた少年が言う。
え、もう着いたの?40km走ったの?
なんだか20kmくらいだった気がする。
その顔は、自分の旅をしている人の顔だった。連れてこられた人の顔ではなかった。
そして海は穏やかだ。5日目にしてようやく夏の日本海に出会えたような心持ちがする。とりあえずドボンだ!
海の幸にも恵まれて
夏の日本海を味わう。
しかし我々には走るべき道のりが残っている。
が、ずっとここで遊んでいたいような気もする。
明日早朝出発するためには今日も早く寝なければならない。なんだかずっと荒れた海辺で時間に追われる生活をしているような気がする。ようやく出会えた夏の日本海でたっぷり遊ぶのも良いのではないか、そんな考えが頭をよぎる。
ここをゴールにして、明日もここに泊まることにしないかい?
そしたら、今日も明日も時間を気にせず海で遊べるよ。帰りの輪行も短くて済むし。
少年たちに相談してみると・・・
賛成、
俺も賛成、
俺も、
俺はどっちでもいい
すんなりまとまるかと思いきや
一人の少年が、
俺は行きたい、最後まで行きたい、
そう言って涙ながら訴える。
改めて一人ひとり思っていることを交わして、元々のゴールを目指すことになった。
そんなピュアな熱い気持ちを秘めていたんだなあ…
しかし、そうと決まれば、今からの時間は明日に向けて過ごさねばならない。
決まったことをぶり返すのは申し訳ないなと思いながら、
今日は夜更かししない?明日の出発をゆっくりにしてさ?
今日のこの神様からのギフトのような瞬間を慌ただしく過ごすのはあまりにも勿体無い。ゴール地点の海に入る時間は少なくなるかもしれないけれど。
いいよ。みんなオッケー!
それまで僕たちを縛っていた「先へ進む」という力から解放されたような感じがした。
暮れていく景色の中で、先のことは忘れて今を最大限遊ぶ。
人生の中でこうした時間がどれほどあるだろう。
少年が言う。
むねがいいこと言った。確かに裸で海に入ったら気持ちいい。
なんだかすごく大事な部分で通じ合えたような気がした。
溺れないようにライフジャケット、日焼けやクラゲから身を守るために長袖のラッシュガードを着て、、、
もちろん必要かつ正しい備えだと思う。
けれど一方で、僕たちの体と海との接点はどこにあるのだろう。海と仲良しになって、全身で味わいたいじゃないか。
裸になってみんなで輪になって海に浸かって、たわいもない話で笑いあって、そしてそれはいつまでもいつまでも続いて・・・
僕は寒くなって海から上がっては熱を帯びた砂に体を埋めて暖をとった。
いよいよ砂も冷たくなってきた。それでも、子どもたちの賑わいは止まらない。
大人になって蘇ってくる子ども時代の思い出ってこんなシーンなのかもなと思いながら、傍で僕は震えていた。
そして、それぞれのお楽しみナイトが続く。