クライアントの声 ヴィジョン・クエスト~滝に挑む~参加 しらたま

こんな力出せたんだ、今まで出してなかったんだ

冒険教育プログラム ヴィジョン・クエスト~滝に挑む~参加 しらたま

 私がこのプログラムに参加した理由は、中高生を対象に一歩踏み出すこと、チャレンジする場を提供する立場になったため、自分自身も何かに一生懸命向き合ってチャレンジしたいという思いがあったからです。小さなころから運動が苦手で、アウトドアアクティビティに興味はあってもやろうと思ったことはなかったため、1日目は本当にみんなに迷惑をかけないか不安でいっぱいでした。滝に挑戦する前、「今の気持ち」を絵で表したとき、もやもやの奥に小さな太陽を書きました。不安だけど、その不安を乗り越えた先の成長や自信を少しでも持てた自分の姿を見たかったのだと思います。2日間の目標は、「考える」「笑顔」でした。きっと、私にとってはできないと思う壁があると思っていたので、なんでここに来たのかを常に考えていたい、また笑顔でプログラムを終えたいという思いがありました。

 F1(最初の滝)では、最初に登る勇気はなくペコが一番に登ってくれました。ペコを手伝うために私も滝の中で一段上がったが、もんどからあそこでよく上がったね、と言われたときにあぁ一生懸命になれてるのかなぁと思いました。

 F2(2番目の滝)では、普段は最後に発言することが多いのですがチャレンジしてみようかな、と思って一番に登ってみました。登ってみたら、F1(最初の滝)とは違う水の勢いを感じました。手をかける場所がわからず探そうと思っても水の力に負けてしまう。息もできなくて、水が怖くて動けなくて真ん中でずっと止まったまま、一度降りたいと思いました。でも、後ろを見るとみんながじっと見つめて応援してくれていたので登ろうと思えました。降りたいけど、今日はチャレンジしに来た、みんなを待たせられない、応援してくれているそんな思いで手をかけられる場所を探し、その場所を見つたときは本当にうれしくてほっとして、降りたいという考えはなくなったように思います。登り切ってムネが出迎えてくれたときは、登りきれたことにホッとしたのと、まだまだ滝は続くんだという思いで、涙がじんわりと出ていました。

 F3(3番目の滝)は、深いところが怖いと言っていたキョロが最初に挑戦しました。キョロがなかなか前に進めずに苦戦しているとき、最初は運動が得意なキョロがあんなに苦労しているのに私に登るのかと思いました。だんだんと自分のことよりもキョロの挑戦を応援する気持ちが強くなって、キョロから目が離せませんでした。キョロが登り切って笑顔を見せてくれたときは、本当にうれしく思いました。でも、まだ登る勇気はなく、ペコが2番目に登ってくれました。ペコの「本流」をいこうという思い、ロープを持ってはいけないけど持ってしまう、その葛藤が見えてきました。2人の必死な様子を見て、私は2人のように挑戦できるか不安と感動とがごちゃ混ぜで自分がどんな気持ちなのかわからないけどまた泣いていました。いよいよ私の番となったとき、もんどが一生懸命最初の一歩を上げてくれました。F3(3番目の滝)では、どこに足場があるかわからず、探すこともあきらめている瞬間もありました。また時間をかけてみんなに迷惑をかけられない、なんでこんなに休み休みなのか、つらい、人に頼ってるな、そんな考えがぐるぐると頭の中を回っていました。さっきF2を登りきれたんだから今度も大丈夫、あと一歩出してみようと言い聞かせて行くしかないと思って登りました。F4(4番目の滝)を最後に見てから帰ったが、ここまでやっと登れたけど、こんなに長くて勢いのある滝を登れるのか不安が大きくなりました。

 夜の振り返りでは、怖いということが言えませんでした。次の日の目標は「無理だと思わない」にしました。いまは怖くて無理かもしれないと思っているけど、明日はこの恐怖を乗り切らなきゃという思いでした。

 朝、出発の段階で今の気持ちを聞かれたときにやっと怖いということができました。普段はみんなの前で泣くなんて、ネガティブなことを言うなんて、という考えだったので自分が昨日からずっと泣いていることがすごく弱いことに感じていたけれど、昨日一緒に頑張ってきてくれて受け止めてくれるみんなには素直な気持ちを伝えたいと思いました。頑張ろう、登れると思おうと思ってもやっぱり怖い、登りたくないと思っていました。

 F4(4番目の滝)でキョロが登り始めると、自分の怖いという気持ちではなく、がんばれがんばれという気持ちで一緒に登っている感覚になりました。ペコの時は、ずっと気にかけてくれていたペコの最初の一歩を下から手伝うことができました。2人が本流の中に顔を突っ込んでいく姿を心から応援しました。こんなに「一緒に挑戦している」と思ったことは今までになかったように思います。2人が頑張っている姿を見て、2人みたいに登りたい、と登る決意がやっとできました。みんながいなかったらきっと登れていなかったと思います。登り始めたら、1日目とは違い「降りたい」ではなく、「次どうしよう」と登るためにすべきことを考えるようになっていました。そして、下からも上からもみんなの視線を感じで、それが登ろう登ろうと思わせてくれました。1日目にはわからなかった「息ができる空間」も、本気で登ろうと足場を探しているときに見つけることができました。1日目は本流から逃げていたからわからなかったのではないかなと思います。最後のひと踏ん張りの時には、こんな力出せたんだ、今まで出してなかったんだと思いました。登り切ってみんなの顔を見たときは本当に安心して感謝の気持ちでいっぱいでした。3人で抱き合ってみんなが登りきれたことを喜べたこと、キョロが泣いてくれたことはいま思い出しても涙が出るほど心に残る瞬間です。

 すぐにあきらめたいと思い逃げることが多かった私が、今まで感じたことがないほど本気になって苦手なことに向かって行けたのはみんながいてくれたからだと思います。つらかったけど、「もうちょっともうちょっと」と思って前に進んで本当に良かったと感じています。苦手意識のあることをやり切ったことで、自分に自信を持つことができました。これからは日々の中でつらいことにぶつかったときもこの経験を思い出せば「もうちょっともうちょっと」と思って頑張れる気がします。そして、2人が登る姿に勇気づけられ一緒に登っている感覚になるほどに支えてくれた素敵な仲間と出会えたことに感謝しています。素の自分を出すことができ、いろんなことを考え、本気になって、みんなからもいっぱい刺激を受けて、とても濃密ないろんな発見のある2日間でした。これからは逃げずに、自分の限界を決めずにどんどん成長していきたいと思います。

photography by atacamaki
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